「海外で病院に行く」って、本当に大変ですよね。
私はアメリカ帯同前の健康診断で、2型糖尿病と診断されました。親族に糖尿病患者はいましたが、30代で、まさか自分がなるとは!と、青天の霹靂で、渡米まで時間もない中、実家のそばにあるとてもいいお医者さんと出会うことができ、最低限の知識を身につけて渡米しました。
アメリカでの糖尿病治療については、また別の記事で細かくご紹介させていただけたらと思います。
今日は、アメリカで病院に行くにあたって、予備知識として身につけておいたほうがいいと思うことをご紹介させていただきます。
目次
アメリカは、先進国の中でも医療費の自己負担額が高い国として有名です。
国民全員が対象の健康保険がないのも、先進国ではアメリカのみです。
- 全て自由診療なのでその病院ごとに医療費を決められるため
- 公的医療制度がないため、医療費の踏み倒しも多く、その回収をするため、「払える人からもらおう」という考え方
- そもそも医者になるための学費が高い(最低でも日本の約4倍)
- 訴訟大国のため
このような理由から、アメリカでは「病院に行かず、自分で治そう」「予防しよう」という意識が国民に強くあります。
そのため薬局でも多くの市販薬が売っています。
緊急性のない体の不調(肌荒れや風邪など)の場合は、まず薬局の薬剤師さんに相談するということがいいかもしれません。
保険制度以外で、日本と最も違うシステムが、この制度だと思います。
日本では好きな時に好きな病院に行くことができます。
しかしアメリカでは「かかりつけ医」を決め、何かあったらまずかかりつけ医に相談する、というシステムです。
例えば、「肌が荒れたから皮膚科に行きたいなあ」と思って皮膚科に予約を取ろうと電話をしても、「かかりつけ医の紹介状がないと受診できません」と言われてしまいます。
そのため、アメリカに長期滞在する方は、まず初めに「自分のかかりつけ医を探す」ことをしなくてはなりません。
かかりつけ医を探す
渡米して、「さあ、かかりつけ医を探そう!」と思っても、どうやって探せばいいのか?わからないですよね。
まず、かかりつけ医を探す上で、これだけはしっかり確認しましょう!
- 自分の加入している保険が使えるか
- 家から通うのに大変でないか
- 自分にあった病院か(小児科か、大人用か、家族まるまる見てもらえるか)
- 口コミは悪くないか
- 自分の好きな雰囲気か(対応は悪くないか)
これはまず第一に確認すべきところになります。
保険会社のネットワークに入っている病院のことを、”in-network”と言います。
in-networkの病院だと、診療料金などを保険会社が病院と値段交渉をしてくれるため、通常より診療料金が安くなることが多いです。
なのでできるだけin-networkの病院を選ぶほうがいいいと思います。
自分で直接病院に電話して保険が使えるか確認することもできますが、アメリカの保険会社の多くは日本語通訳者がいることが多いので、保険会社に電話して日本語で確認してもらうこともできます。
これは気にしない方もいるかもしれませんが。。。
アメリカの病院(かかりつけ医にかかる場合)は、全て予約制です。
常に混み合っていて、予約を取ることも大変です。
そして時間を過ぎてしまうと、再度予約を取らないと診てくれません。
車社会のアメリカは、車の事故もとても多いです。
そしていったん事故が起きると、ものすごく渋滞します。
そのため、できるだけ自宅から通いやすい場所であることも、私は大事だと思っています。
アメリカにも日本同様、小児科、内科、専門医など、様々な病院があります。
アメリカでは救急医療や手術などを行う総合病院をHospotalといい、かかりつけ医はClinicで探すのが一般的です。
こちらのサイトから、その病院がどのような診療内容なのか、保険は使えるかなどまで確認することができます。
アメリカでは小児科専門のクリニックはなく、Family Practice(家庭専門医)とGeneral Practice(一般診療)が、子供も大人も見てくれるクリニックになります。
ご家族で同じクリニックを受診したい場合は、まずはそのクリニックがお子さまの診療をしてくれるかということを確認することをお勧めします。
会社の同僚や駐在員の方の話を聞くなどして、口コミを集めましょう!
現地の人の話も参考になりますが、やはり人種によって受けるサービスに違いがある場所も稀にあります。
そのため同じアジア人の方の口コミはとても参考になります。
会社によってはこれまでに駐在員が使った病院のリストなどを持っている企業もあるので、こちらも確認してみてください。
予約の電話をして、実際に診察を受けてみて、自分がどう感じたかということもとても大事なことだと思います。
病院の雰囲気はいいか、先生に言いたいことをきちんと伝えられる雰囲気か、英語が苦手だとして、それでも相手はきちんと聞こうとしてくれるか?など、実際に診察を受けてみないとわからないことも多いと思います。
予約の際に「ホームドクターを探している」と伝えれば、風邪などをひいていなくても簡単な診察を受けることができます。
ある程度口コミを集めたら、実際にクリニックに足を運んで確認しましょう。
診察を受ける
診察を受ける際に、気をつけることがあります。
- 時間厳守(初診の際の問診票が膨大ため、時間には余裕を持って)
- 家族の既往歴を確認しておく(祖父母まで)
- 服用中の薬があれば持参
- 母子手帳の英訳があれば持参(お子さまの診察の場合)
- かかりつけ薬局を決めておく
- 電子辞書を持参する
まず、時間に関しては、初診の際は「予約時間よりも20分早く来てね。」など、早めに来るようにと言われます。
それは膨大な問診票を書くためであることが多いです。
日常会話なら問題ないと思っている方でも、普段聞きなれない医療単語満載の問診票を全て埋めるのは一苦労です。
そして、そこで家族の既往歴、使っている薬、かかりつけ薬局についてなど、様々なことを記入します。
かかりつけ薬局は、特にこだわりがなければ家の近くの薬局でいいと思います。
Walmartなどのスーパーに併設されている薬局でも問題ありません。
私はこの20分以上かかったと思います。
クリニックによっては、事前にHP上などで問診表を印刷して、当日持ってくるように、と言われるクリニックもあるので、それは予約の際に確認した方がいいでしょう。
診察では、まず看護師さんと話をします。
今日はなぜ来たか?体調は?問診票をもとに話をしていきます。
ここで身長体重、血圧なども測ります。
その後医師との診察になります。
診察が終わったら、会計をして、必要な場合は次の予約を取ります。
保険会社によって、Co-Payという、一時支払い金が決まっています。
クリニックではその金額を支払います。
薬局で薬を受け取る
クリニックで診察が終わったら、薬局で薬を受け取ります。
日本と違い、処方箋はクリニックから薬局へ直接データで送られます。
なので自分たちで処方箋を持っていく必要はありません。
薬局では、再度自分の保険内容の確認をしてもらい、処方された薬を受け取ります。



アメリカは、慢性的な医師不足に悩んでいます。
そのため患者が通院する回数を減らすため、「この薬は何回までレフィルOK」という、薬のレフィルシステムがあります。
また、処方箋の期限も、一年程度あり、好きな時にとりにいくことができます。
何回レフィルがあるかは、もらう薬に書いてあるので安心。
こんな感じです。

この薬の場合、レフィルは1回です。
このレフィルの回数内であれば医師の診察なしで薬だけ薬局でもらうことができます。
このレフィルの回数が0になると、薬局から医師に追加で処方していいか確認してくれて、問題がなければ処方されます。
アメリカではかかりつけ薬局を作るというシステムなので、薬剤師さんとの距離も近く、わからないことや心配なことがあればすぐに相談できる雰囲気があります。
また、レフィルがある薬を処方されている場合は、レフィルがなくなりそうな時期に薬局からメールが来て、追加で薬をお願いすることができます。
このシステムによって薬を飲み忘れることもなくなり、メールで申し込んでから薬局に取りに行くだけなので時間もかからないので、私のように薬を常に服用している人にはとても便利なシステムだと思います。
医療費の追加支払い
クリニックで診察をした後、1〜2ヶ月経過すると、保険会社から自宅に治療費の請求書が届きます。
アメリカでは保険会社と病院との間で、治療費をいくらにするかの話し合いのあと、治療費が決定するため、実際に診察をしてもらった時点では治療費がいくらか決まっていない状態です。
病院で支払った一時支払金では足りなければ、追加で支払うことになります。
支払い方法は直接病院に払いに行く他、アプリで支払うこともできます。
「アメリカの医療費は高い」というイメージ通りで、以前、肌荒れがひどくてクリニックに行った際、市販薬を勧められて、ステロイドの薬を処方してもらいましたが、それだけでCo-Payの30ドルと、追加で30ドルの、合計60ドル支払いました。
目が痛くて予約なしで行けるWalk-inの眼科に行った際は、眼底検査だけしてもらって処方薬はなく、60ドルでした。
日本に比べ、アメリカはクリニックの敷居が高く感じます。
やはりその理由は、高額な医療費がありそうです。
病院に行きたいタイミングに、すぐかかりつけ医の予約が取れるとも限らないですよね。
土日に風邪をひいて病院に行きたい時もあると思います。
その場合に便利な病院が、Urgent Care(急病診療所)とER(救急センター)があります。この2つはしばしば混同されるため、簡単にまとめました。
Urgent Care (Walk-in Clinic) | ER | |
診療時間 | 休診時間帯もある | いつでも |
待ち時間 | 通常のクリニックと同じ程度 | 長い(緊急性の高い患者から診る) |
対応できる病気 | 通常のクリニックと同じ程度 | 重病でもOK |
治療費 | 通常のクリニックと同じ程度 | 高い |
ERは、交通事故や脳卒中など、緊急性の高い患者が運ばれます。
そのため軽症だと診察までに時間がかかることがあります。
また、ERは「すべての患者を受け入れる」ため、貧困のため保険に加入せず利用し、そのまま治療費を踏み倒す患者も少なくありません。
そのため他の利用者からその費用を回収するため、ERの治療費は一般のクリニックよりもはるかに高いことが多いです。
このような理由から、心臓系や交通事故のような重病時以外は、できるだけUrgent CareやWalk-in Clinicを利用することをお勧めします。
アメリカで病院にかかる流れと、注意事項をまとめさせていただきました。
最初は慣れないことも多いかと思いますが、個人的には「かかりつけ医を持つ」ことは、相談したいことがある時や心配事がある時にとても安心して相談できるので、いいシステムだと思います。
保険会社によってはベネフィットとして1年に1回、歯科検診が無料になったり、健康診断に行きましょう、というようなお知らせが来ることがあります。
多くの保険会社には日本語通訳もいると思うので、わからないことがあれば保険会社に問い合わせて、しっかり保険システムを利用して、快適なアメリカ生活を送りましょう!
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